13:32:12
22

血の鎖に繋がれて《16》

俺の名を呼び泣き続けるヒロ。腰に回された腕の強さに、自分が必要とされていると俺がほしいと錯覚してしまいそうだ。
ヒロの心はミユキ一色、俺との関係は何だろうな?共存関係か?龍成に抱く気持ちとは明らかに違う、この愛しいまでの独占欲を感じるのは・・・・。
龍成しかいらない、それ以外は興味も何も感じない。
俺の地位と容姿に群がる女や男、気が向けば欲を吐き出す道具、不必要と思えば優しげな表情で、簡単にゴミを捨てるように切り捨てる。
それが、俺だったはず。
龍成に必要とされたい、それは今も変わらないと思っていたのに。この腕の中の生き物が愛しくてたまらない。
俺の腕の中で俺の手で、俺の楔で淫らに獣と化し、俺を求めるのに、何故なんだ、俺を映さないその瞳に寂しさを感じるのは。

意外と柔らかい髪を撫ぜ、ぼんやりと物思いにふけっていた俺の腕の中で微かな寝息が聞こえていた。
泣き疲れた目の周りは赤くなってしまっている。瞼に残る泪をそっと唇で拭う。

無意識に愛してると言ってしまった。それが本心なのか、考えるのは止めよう、解らないのだから。まぁ、そのうち解るかもな。

このまま寝てしまいたいが、流石に不快感を感じる。
そっと腰に回った腕を外そうとするが、嫌々をする子供の様に擦り寄ってくる。
その仕草が可愛いと思ってしまう。
亮がヒロの事を可愛いと言っていたのは、こんな無意識の仕草なんだろう。
見た目はかなり強面のきりっとした男前だし、身長も俺と大差ないから、190に近いはずだ。
空手をやっていた割には、マッチョでなくスレンダーな綺麗な体だった。

さっきまでのヒロの姿を思い出すだけで、息子が反応しそうになる。俺もまだまだ若いなと苦笑が漏れる。

何とか腕から逃れ、シャワーを簡単に済ませ、ヒロの体も丁寧に拭いていく。
(綺麗だ・・・)
無駄のないしなやかな裸体に見惚れてしまう。
「知則・・・・」
あまり眺めていては風邪をひくと、布団を掛けようとすると寝返りを打ちながら俺の名を呼ぶヒロ。
(起きたのか?)
静かな寝息が聞こえ、寝言だったようだ。
(俺を呼んだよな・・・ミユキじゃなかった・・・)
たったそれだけの事が何故こんなに嬉しいと感じるんだ。

俺は、理解できない自分の感情を抱えたまま、それでも愛しいと感じる獣を腕の中に抱え込み瞳を閉じた。
二人で安息の眠りに。


枕もとの携帯の着信音で目が覚める。
腕の中のヒロは少し唸りながら俺の腕にすり寄って寝息を立て始めた。
「なんだ?」
控えめの声で答えると
「寝ていたのか?」
夜なんだから寝ていて当然だろうと思いながらも
「今何時だ?」
「まだ夜中の一時過ぎだが、一人寝じゃないようだな」
意味ありげに言う相手は亮だった。
返答に困っていると
「明日、話がある。ヒロは起きなかったか?」
同じベットで寝ているのがヒロだと知っての問いかけに、深い溜息が零れた。
「大丈夫だ。明日昼の時間でいいか?夜はヒロの傍にいたい」
「何かあったか?」
「少しな。俺も亮さんに尋ねたいことがあります」
「ヒロの事だよな。解った昼の二時頃店を開けておく」
ありがとうございますと電話を切った。携帯を近くのクッションに放り投げ息を吐き出す。亮さん相手にかなり緊張していたみたいで笑えた。
「誰から?」
寝ぼけた声に「仕事の確認だ」と言ってヒロを抱き寄せ額に口づける。
「まだ、夜中だ。もう少し寝ていろ」
「うん、でもお腹が空いてきた。何か食べたいけど・・・・」
続きの言葉を待っていたが肩に顔を埋め、腕と足を絡ませ、しがみ付いてくる。まるで離さないと縋りついてくる子供の様だ。

(亮さんはいつ気づいたんだろうか?)

明日会った時に聞けばいいかと、もう一度ぬくもりを抱きしめ瞳を閉じた。   
12:49:22
26

血の鎖に繋がれて《15》★

ベットに降ろしたヒロを見下ろし、涙の残る頬に手を添え、瞼に軽くキスをする。見上げるヒロの瞳はユラユラと夢の中を彷徨っている。
「ヒロ…」
薄く開いた唇を啄むと微かな声が漏れる。
唇を愛撫しながら、シャツの中に滑り込ませた手でしなやかな腹筋を指でなぞる。
俺の手で淫らな吐息を零すのに瞳は俺を映さない。
「ヒロ、今お前を抱いているのは誰だ?」
耳に舌を這わせ囁くように問いかける。
俺の声に体を震わせ甘い吐息を零す。ズボンの上から緩やかに誇張する雄に指を這わすだけで背をしならせ、もっとと言わんばかりに腰を動かす。
「お前はどうして欲しいんだ?言えよ、して欲しい事を」
「嫌だぁ・・・」
「何が嫌なんだ。止めてほしいのか?違うだろ?」
「終わらせてくれ・・・苦しい・・・」
ズボンを寛げ下着の上から緩やかな動きで愛撫してやる。先走りでしっとりと濡らした下着、もっと強い刺激がほしく我慢できないとポロリと零れ落ちる涙。その姿はエロく俺の欲情を煽る。
下着ごと服を脱がし、イかせるため手で包み込み動きを速める。
「今お前を抱いているのは誰だ!俺を見ろ!」
悶え色香を放つ体、熱を吐き出し余韻に浸る体から服を取り去り、無駄のないしなやかな豹のような裸身を眺めながら自分も服を脱ぎ棄てる。
浅い呼吸を繰り返す胸の小さな飾りに舌を這わせ、もっと強い刺激を求めひきつく秘部は先走りが伝い愛撫を待ち侘びる花の様に蜜で濡れているようだ。
指を差し入れた中は熱くうねる様に指に絡みつく。
「そんなに煽るな」
「早く、きて・・・俺を抱きしめてくれ」
「抱きしめてほしいのか?誰に抱きしめられてるのか解っていないのにか?勝手な奴だな」
「・・・・あぁぁ・・・もっと・・・そこは・・だめだ・・・」
「駄目じゃないだろ?指が増えたのが解るか?お前の中熱いな、俺のが欲しいか?」
「欲しいぃぃ・・・俺を壊して・・・」
(壊したりしないさ、俺は愛してやるよ)
心の中で呟き指の代わりに猛った楔で存分に愛してやる。
体位を変え何度も熱を吐き出し、狂ったように求めあった。
獣の様に四つん這いに腰だけを上げ、俺の律動に妖艶に撓らせる背中。
踊る筋肉の美しさを堪能しながら思う。
俺は、龍成だけを想い慕っていたはずなのに、このしなやかな獣に魅了されどんどん深みに嵌っていく。深みに嵌っていく自分が嫌でなく、むしろ歓喜さえ感じている。自分で自分の本心が解らない。この獣の体に囚われてしまっているだけなのか?ならば、ヒロの瞳に俺が映っていようが関係ないはず、だが、あの瞳に自分がいないことにイライラとする。体だけでは満足できないでいる、心も欲しいと。
終わりが近い、腰の動きを速め頂点へと。
絶頂を迎えたヒロの最後の喘ぎは掠れた音色の様に途切れ途切れにに消えていった。
余韻を残し大きく上下する体を抱きしめる。
この想い、愛しくてたまらない。
「ヒロ、愛してる」
告げるつもりのない俺の思いが溢れ出てしまい、無意識に呟いていた。
ヒロは俺の声に小さな吐息をを零し、それはいつの間にか嗚咽と変わっていた。
「知則・・・・」
枕に顔を埋め泣くヒロを俺は只々強く抱きしめていた。
08:40:54
19

血の鎖に繋がれて《14》

髪に触れる優しさに懐かしく甘い思いに満たされる。
「ミユキ、もう少しだけ寝たい・・・」
ふわりと抱き寄せられたのだと思う。頬に触れる温かさと心地よく聞こえる鼓動に俺は穏やかな眠りに吸い込まれていった。

『ヒロ・・・』
ミユキの呼ぶ声に意識が浮上する。俺は薄暗い部屋のベットで寝ていた。
『ヒロ・・・行こう・・・』
「どこに行くんだ?」
『僕達だけでいられる場所に』
「一緒にいてくれるのか?」
『もちろんだよ。僕はいつも一緒だよ』
「そうだったな。連れて行ってくれ、俺も」
俺の手にミユキの手が重なり、ついと引かれる。俺はその力に逆らうことなどできない。
俺の目には幻のミユキしか映しはしない。ふらふらとその手に委ねどこか解らない部屋の玄関の戸に手をかける。


*******
橘は秘書の峰崎にまだ余裕のある事後との説明をして、指示を出していると携帯にメールが一件入ったと通知が来た。ヒロから今着いたと、夕飯作って待っていると。
自然と顔が綻ぶ俺に、峰崎が不思議なものを見たと言わんばかりの驚きの表情を見せる。
「なんだ?」
「いやなんでもない」
一睨みすると慌てて部屋を出て行った。
おかえりと玄関まで出迎えるヒロの姿を思い出し、表情がまた緩む。
俺が子供に落とされるとは・・・何とも情けないような気恥しい気分になる。

急ぎの仕事を済ませ、やっと会社を出るころには辺りはもう暗く、煌びやかな明かりは夜の装いへと衣替えを済ませていた。

車を走らせマンションについた俺はチャイムを鳴らすことなく鍵を使い部屋へと向かった。
カチャリと鍵を開けドアを開けるが、部屋は静かなままだった。
いつもならドアを開ける音でヒロの足音が聞こえて来るのだが。
リビングを覗くがヒロの姿はなく、夕食の支度をしてるのかとキッチンを覗くと、食器棚にもたれ膝を抱え眠るヒロがいた。
「ヒロ、風邪ひくぞ」
髪をすいてやると少し身じろぎを見せたが、起きる気配のないヒロを抱き上げ寝室へ向かった。
俺の腕の中胸に頬を摺り寄せ呟いた言葉、「ミユキ、もう少しだけ寝たい・・・」
甘い空気が冷たくなるのを感じ、ヒロをベットに寝かしぶつけてしまいそうな憤りを振り切り寝室を出た。
ヒロの寝言に翻弄される自分の気持ちが制御できず苛立つ。思い体をソファに沈めため息を零すなど、ここ数年したことがなかったのに・・・またため息がでる。

ぼんやりと天井を眺めていた俺は、ヒロと一緒の食事を楽しみにしていたのにと、一人で食べるかと重い腰を上げキッチンに向かう。そこには、器に盛る前の料理が冷たくなっていた。

一人で食べるのにわざわざ温めるのが面倒でそのまま器に盛り、食事をとる。
冷めていてもヒロの味付けは俺を幸せにしてくれ、苛立ちは消えホッと満たされた心と胃袋が暖かく感じた。

食後にコーヒーを淹れ、ヒロがテーブルに置いたままにしていた課題に目を通しているとヒロがふらふらと玄関に歩いて行った。

「ヒロ?帰るのか?」
「・・・・」
橘の声にも何のリアクションもなくドアを開け出ていこうとする。その足は靴さえも履くことを忘れ何かに導かれるように前に踏み出す。

異変を感じた橘がヒロの体を抱きしめ、ヒロの視線はゆっくりと閉まるドアを見つめていた。
「ミユキ、行かないでくれ。俺を一人にするな・・・頼む・・・離して、ミユキが行ってしまうから、嫌だぁぁ・・ぁぁ」
橘の腕の中で暴れ叫び泣くヒロ、橘の腕はより一層強く抱きしめた。
「ヒロ、帰ってきてくれ、俺のところに帰ってきてくれ。いくらでも俺はお前の傍にいてやる。お前だけを見ているから。頼むよ・・・。」
震えるヒロの背中に顔を埋め悲痛な声で哀願する。ヒロに出会うまでは橘の心の中は龍成で占められていた。それなのに今は橘の心はヒロだけを求めている。

ズシリと腕に重みを感じた橘は、虚ろな瞳のヒロを抱きかかえ寝室に向かった。

ヒロをこちらの世界に引き戻す為、自分に繋ぎ留めるため、ヒロを抱く為に。
08:34:21
19

境界線

777.jpg


全ての事に意味を成さなくなった

自分の為だと繰りかえされる言葉に
与えられる事を
唯、熟すだけの日々
僕の心は枯れていく

自らが望む望まない
そんな事を考えたのは
初めの一時

拒否を示す僕に
「お前の為だから」
その言葉が僕を縛り始める

僕の中から
「NO」の言葉が消え
「YES」の言葉のみに

感情の薄い僕
誰からも認識されない世界
モノクロの世界に
ポツリと色を添えた君
夏の暑い日の彼の一言
「楽しいか?」
楽しいと思う心さえ無くした僕に
何が楽しいかも解らなくなった僕に
「いつも、つまらなさそうだな」

見上げた視線の先に
色鮮やかに輝く彼
僕の止まったままの時計が
カチッと音を立てた

「楽しむってなに?」
「俺と行こう」

僕の腕を取り駆け出した
夏の光の中

声を出し笑う事を
疑問を投げかける事も
拒否をする勇気も
彼と過ごす日々が
僕を人間に戻してくれた

明るい陽射しが
緩やかになる頃
彼の後ろ姿を眺めていた

彼は明るい陽射しの中
僕は憂いを含んだ重い雲の下

夏と秋の境界線の様に
僕と彼の隙間

彼との鮮やかな色の景色が
消えた今
全ての事に意味を成さなくなった

08:26:00
19

振り返って

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ジリジリと暑い陽射しに
頑張れと追い立てられ
前を向いていた視線は
いつの間にか
溶けそうなアスファルトを
踏み締め足先ばかり眺めてる

木陰に身を寄せた体は
空を見上げ溜息を零す
ソフトクリームのような夏の雲
「早くウロコ雲にならへんやろか」
消え入る様な弱音に
苦笑いを浮かべ
熱気を含んだ風に煽られ
否応なく一歩を光の中に踏み出す。

頑張れ!頑張れ!と声援のような
暑い陽射しに負けまいと
負けん気ばかり強い僕は駈け出す。
「夏や、暑のは当たり前や」
負け惜しみの声も呟きに
木陰から直ぐに追い出されるなら
光の中を頑張ろうと。
いつしか木陰に
柔らかい風が舞う頃が来たのも忘れ
がむしゃらに太陽に挑む。

ほんの少しでも振り返れば
ほんの少しでも周りを
見る余裕があれば
気がついたははず
優しく包む秋の風が癒してくれる
夏と秋が同居する場所
ホッと強張った体を癒してくれる
心地良い空間に

厳しかった風が
ほんの少し優しくなっているのに

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